JASRAC作品届誤記事件

2017-12-14 判例

JASRAC作品届誤記事件

 

東京地裁平成29.7.27平成29(ワ)2694著作権確認等請求事件PDF

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/003/087003_hanrei.pdf

別紙PDF

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/003/087003_option1.pdf

 

東京地方裁判所民事第47部

裁判長裁判官 沖中康人

裁判官    矢口俊哉

裁判官    島田美喜子

 

*裁判所サイト公表 2017.8.9

*キーワード:音楽著作権管理、作品届、氏名表示権

 

——————–

 

■事案

 

JASRACへの作品届を音楽出版社が誤記して提出した点について作曲者が争った事案です。

 

原告:作曲者

被告:作詞者、音楽出版社、JASRAC

 

——————–

 

■結論

 

請求却下、棄却

 

——————–

 

■争点

 

条文 著作権法115条

 

1 確認の利益の有無

2 被告JASRACに対する差止請求の当否

3 被告Bに対する謝罪広告掲載請求の当否

 

——————–

 

■事案の概要

 

『本件は,別紙1著作物目録記載の歌曲(歌詞と音楽の両方を含み,以下「本件歌曲」という。)に係る楽曲(音楽部分のみを指し,以下「本件楽曲」という。)の作曲者でその著作権を有する原告が,本件歌曲に係る歌詞部分(以下「本件歌詞」という。)の作詞者である被告Bにおいて,自らが本件楽曲の作曲者であると偽って本件楽曲を含む本件歌曲の著作権を被告CAP社に譲渡し,被告CAP社において,被告JASRACに対して本件歌曲に係る著作権管理を信託し,被告JASRACにおいて,本件歌曲の著作権を管理し著作物使用料を徴収しているなどと主張して,(1)被告らに対し,原告が本件楽曲の著作権を有することの確認を,(2)被告JASRACに対し,著作権法112条に基づき,本件楽曲が使用された場合における著作物使用料の徴収の差止めを,(3)被告Bに対し,同法115条に基づき,謝罪広告の掲載を,それぞれ求める事案である。

これに対し,被告らは,原告の確認請求に係る訴えについては確認の利益がないとして却下を求め,その余の請求については理由がないとして棄却を求めている。』

(2頁以下)

 

<経緯>

 

H27.08 被告CAP社と被告JASRACが著作権信託契約締結

H28.11 被告Bが被告CAP社と本件歌曲の著作権譲渡契約締結

H28.11 被告CAP社が作品届で誤入力

H29.02 被告CAP社が作品届の撤回手続

 

楽曲:メランコリーメリーゴーランドガール

作曲:原告

作詞:被告B

 

——————–

 

■判決内容

 

<争点>

 

1 確認の利益の有無

 

・被告Bは自らが著作者ではない本件楽曲について被告CAP社との間における著作権譲渡契約の対象から外していた

・被告CAP社が本件歌曲についての作品届を被告JASRACに提出する際に担当者において誤って本件楽曲の作曲者も被告Bである旨入力した

・訴訟提起後、被告CAP社は被告JASRACに対して本件歌曲の信託譲渡を撤回する旨の書面を提出

・被告JASRACは本件歌曲を同被告の管理著作物から除外する処理を速やかに行った

・本件訴訟も含めてこれまで一度も原告が本件楽曲の著作権を有する点を争っていないといった事実認定から、裁判所は、原告が被告らに対して原告が本件楽曲の著作権を有することの確認の利益があるとは認めていません(12頁以下)。

結論として、本件訴えのうち、原告が本件楽曲の著作権を有することの確認を求める請求に係る部分については、確認の利益が認められず不適法として却下されています。

 

——————–

 

2 被告JASRACに対する差止請求の当否

 

被告JASRACが今後、原告が著作権を有する本件楽曲についてその著作権者が原告ではないことを前提にこれを管理し、これが利用された場合に著作物使用料を徴収するおそれがあるとは認められず、これに反する原告の主張は採用できないと裁判所は判断。原告の被告JASRACに対する本件楽曲についての著作物使用料の徴収の差止請求は理由がないとしています(14頁)。

 

——————–

 

3 被告Bに対する謝罪広告掲載請求の当否

 

被告CAP社の事務処理上の誤りによって本件楽曲が被告JASRACにおいて管理されるに至ったものであり、このことに被告Bが関与したとは認められず、また、このような事態の発生について被告Bに故意・過失があったとも認められないと裁判所は判断。著作者人格権(氏名表示権)の侵害を前提とする同被告に対する謝罪広告掲載請求は理由がないとしています(14頁以下)。

結論として、争点2と3については、棄却されています。